ブント機関紙「SENKI」第922号
(1997年11月05日号)に「文人 正」署名で掲載された記事


 この『波紋』の文章中には
『ロフトプラスワン襲撃を許さない共同声明』の
呼びかけ人である玄田生氏の戸籍名が勝手に記載されて
いましたが、代表管財人の判断で伏せ字に変えておきました。



「ロフトプラスワンの波紋」




 「ロフトプラスワンの事件」について本紙編集部に、いろいろな団体・個人から、手紙・ファックス・電話あるいはパソコンネットで賛否両論の意見・感想が寄せられている。

「左翼の矜持」

 「(ブントを)徹底的に断罪する」「全戦線から放逐しよう」なんて、ブントに対するコンプレックスとルサンチマンにかられた某党派が機関紙に書きまくっていることは既に報じた。ところでこの某党派とは正反対の反応を寄せているのが「スパルタシスト・ジャパン」の人達である。
 10月21日の夜、「スパルタシスト・ジャパン」の月岡氏から、「ロフトの件でブントのファシストへの反撃を支持することを組織決定したのでお伝えします。また、ファシストの新たな攻撃があったら些細なことでも知らせて欲しい。以上、中央委員会にお伝えください」という趣旨の、とてもていねいな電話をいただいた。突然の電話にちょっと驚かされたが、綱領にトロツキズムとレーニン主義を掲げる人達の「左翼原則主義的な見解」だ。
 けだし、『テロリズムと共産主義』(1920年)で、「この任務(−−革命・筆者)は、血と鉄によってのみ、達成することができるのだ」と、赤色テロルの行使を積極的に主張した革命家こそ、ロシア赤軍の創設者にしてその総司令官であつたトロツキーその人であった。そういう意味で「スパルタシスト・ジャパン」の人達は、ファシストとの闘いへの支持を言っているのだろう。もっともわれわれはファシストの襲撃には正当に反撃するが、それはあくまでも「受苦に対する抗拒」なのである。トロツキーのいうような赤色テロルのつもりなのではないのだが。
 その点と関連して「ノンセクト」を名乗る人から、次のような「匿名の投書」もあった。匿名氏は、「私は無差別テロや内ゲバには反対です。レーニンの赤色テロルも間違っていたと思います」とした上で、だが内戦状態にあるときに「本当に反革命的な人物」を襲撃することは「必ずしも悪いことだとは思いません」という。佐藤を殴る位は当然だというのかと思ったら、けれども現在の日本はそういう状態(内戦状態)は存在しないから、「左翼が『チンピラ』を襲撃しても左翼には何もプラスにはならない」「左翼の評判を落とすだけ」であり、だから「私は今回はブントのみなさんは暴力については意地をはらずに謝ってしまった方が得策だと思います」と書いている。
 「内ゲバ主義やセクト主義に反対」という匿名氏の意見には賛成だ。日本の新左翼運動は、連合赤軍の同志虐殺や革共同両派の「終わりなき内ゲバ」など、「唯一の前衛党」思想や独断的セクト主義を克服できずに民衆的支持を失ってきた。その轍をブントは踏むなという意見はよくいわれることだ。

モルモットの抹殺

 しかしそもそもどうも匿名氏は、前提的に「ブントがチンピラを襲撃した」と勘違いしているようだ。彼は、「『模索舎月報』1997年10月号(37ページ)で『ロフトプラスワンの事件』を知りました。詳しいことを知らないので間違ったところもあるかもしれません」と書いている。それで当該の『模索舎月報』を読んでみると、そこには名木太氏の署名で次のような文章があった。「個人に対して組織的な暴力をはたらくというのはダメでしょう。……対話の意志なく、一方的な暴力で黙らせようとするのは、ダサイと思います」。
 まあ、ここに基本的な事実誤認があるわけだ。すでに本紙においては事実を明らかにしてきたように、7月8日に学生のH君に殴りかかりミミズ腫れになる負傷を負わせ、16日には抗議にいった仲間に対して、ナチス棒と催涙スプレーを振り回して襲いかかったのは佐藤悟志氏なのである。
 「戦旗・共産同中退」を売り物にしながら「ブント清算事業団管財人」を売り物にする佐藤。国鉄労働者1047人の首切りと100名近い自殺者を出した「労働者の受苦」を知りながら、平然と「ブント清算事業団管財人」を名乗る佐藤の感性は文字通りファシストのそれである。この自称ファシストのあまりにも理不尽な暴力にたいして、素手のブントの若者たちがやむにやまれずに反撃したのが真実だ。
 この点を直接名木太氏に問い合わせたところ、氏は「ロフトプラスワン襲撃を許さない共同声明」(以下「共同声明」)だけを読んでこの文章を書いたのだという。それで「(ブントが)一方的に暴力で黙らせようとした」というのは事実誤認だから、今度訂正文を出すとか言っていた。
 また佐藤は、エロ漫画家(自称)の玄田生氏(本名XXXX)などの元「秋の嵐」のメンバーなどと一緒に「共同声明」なる運動を展開し、自分が被害者だという「ものがたり」を流布している。
 そこでは、「この声明と事件そのものに関する情報を拡げて、会話や討論を展開して下さることをお願いします」なんて言っている。だがわれわれブントのところには「釈明と謝罪を求める申し入れ」なるものが、それこそ「一方的に」郵送されてきただけだ。つまり「批判のやり玉」に挙げられているわれわれの知らないところで、「匿名」のファックスや電子メールで「ブントがロフトプラスワンを襲撃した」なるデマゴギーを流布するファシスト運動をやってるわけである。
 また本紙が前号で、「共同声明」のホームページに佐藤の「同居人代表のモルモット」の賛同人なるものの写真が掲載されていると批判するや、たちどころにこのモルモットの写真を削除・抹殺している。そうやって賛同人を勝手に増やしたり削ったりできる運動のようだ。

常連客と非常連客

 ところで「今回の事件」が巷で取りだたされるようになってから、「そもそもロフトプラスワンって何ですか」としばしば聞かれる。困ったことに、われわれは7月8日の「ロフトプラスワンの幕開け」以前は、この「乱闘酒場」について何も知らなかったのである。しかしそうした中で「ロフトプラスワン非常連客有志」を名乗る人達の、「『襲撃を許さない共同声明』の自分勝手」が送られて来た。それを見てだいたいわかってきた。
 ビラでは、「(ロフトプラスワンでは以前から)佐藤氏や共同声明の呼びかけ人の玄田生(本名XXXX氏)など元「秋の嵐」に属する人々による『暴力による威嚇と恐怖』によって、しばしば『言論の自由』が踏みつぶされてきた」と、佐藤やXXのロフトプラスワンでの暴力沙汰をいくつか具体例を挙げて指摘している。
 とりわけ今年の4月にXXが右翼との間に引き起こした暴力事件については、ロフトプラスワンの常連ゲストである鈴木邦男氏が『SPA』の10月22日号に次のように書いている。「実はロフトでの乱闘・流血事件はこの直前にもあった。他の右翼と左翼系漫画家(注、XXのこと)の激論が昂じて、殴り合いになったのだ。『相手が先に手を出したのだ。こっちは正当防衛だ』と右翼青年は言う。一方の漫画家は、『はずみで相手の胸ぐらをつかんだら5人がかりで袋叩きにされた。鼻の骨を折られ肋骨も折られた』と言う」。
 また『模索者通信』で名木太氏も、「佐藤さんの批判の仕方は私もプラスワンで見たことがありますが、時に暴力直前の挑発的なものであって、個人的にはあまりよろしくないと思っていました。だので、批判の内容の正否に関わらず、批判を受けたものが非常に不愉快に思うのは分かります」と書いている。
 どう見ても佐藤やXXなどは、「ロフトプラスワンの内外で挑発的な言動や暴力行為を繰り返してきた人物であることは、常連客にとっては周知の事実」(「ビラ」より)だったようだ。それを知らなかったのはどうやらわれわれブントばかりであり、「その筋」では「衆目の承知するところ」であったのである。
 ところで鈴木邦男などは、この間の「事態」に刺激されたのか、10月29日号の『SPA!』に「『絶対平和主義者』を捨て、逆襲を開始する!」として、「ロフトに来る無礼なゲストや客にも次々と『試合』(「バーリ・トゥード」格闘技戦だそうだ)を申し込んでやる」「罵倒、中傷、プッツンがいいのなら、『5秒以内の肉体言語(暴力)』も認めるべきだ」なんて書いている。ブントの影響を受けたなんて言われると困るので書いておくが、われわれはたとえばハーバーマスが『コミュニケーション的行為の理論』などで論じているような、「事実」と道徳的良心に基づいた誠実な討論によって「合意」を形成できるような「市民的公共圏」の形成こそを求めている。
 「自由な空間」というならば、ロフトラスワンでの討論もそうした方向性をめざすといいのではないか。(文人 正)




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