Voyage |
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僕達は幸せになるため
この旅路を行く
誰も皆癒えぬ傷を連れた
旅人なんだろう
ほら笑顔がとても似合う
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2002年10月25日付朝日新聞より
5人戻さず家族帰国要求
政府、北朝鮮に伝達
「交渉で協議」の回答
政府は24日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による拉致事件の被害者で、日本に帰国している5人について、本人の意向にかかわらず、このまま日本に永住させたうえで、北朝鮮に残した家族の早期帰国を北朝鮮側に求める方針を決めた。北朝鮮側も、5人の滞在を延長しても、29日再会の国交正常化交渉には支障がない考えを伝えてきており、5人と家族の永住問題は正常化交渉のなかで決着が図られる見通しになった。
政府が帰国を求めるのは、帰国した拉致被害者5人の子供7人と、曽我ひとみさんの夫で米国籍のチャールズ・ジェンキンスさん(62)。横田めぐみさんの長女キム・ヘギョンさん(15)も「母親が日本人であれば日本人」(安倍官房副長官)として来日を求める。
外務省は24日午前、日本側の考えを北朝鮮側に伝えたところ、北朝鮮側は「金正日総書記に報告する」と応じ、午後になって「正常化交渉の中で協議しよう」と回答してきた。これを受けて夕方、小泉首相が川口外相、安倍官房副長官、田中均・外務省アジア大洋州局長らと協議し、北朝鮮側が態度を硬化させることはないとみて、5人の滞在延長を最終決断した。
この問題に関連して、首相は24日夜、「ご家族の意向と、総合的に色々な事情を勘案した。(正常化交渉に)どういう影響を与えるか、不透明なところもあるが、政府が決めたことだから、実現するように北朝鮮側に働きかけていきたい」と記者団に説明した。
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今後も一緒 うれしい
「永住帰国」方針
家族「24年の願い実る」
思い複雑、5人笑顔なく
「24年間、叫び続けた願いが実った」。24日夜、記者会見する父や兄の顔がほころんだ。望み通り、政府は「永住帰国」を朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に求めていく方針を正式発表した。生存情報がもたらされてから38日目。拉致被害者家族の必死の願いが国を突き動かした。しかし本人たちは、平壌にいる夫や子を案じて、笑顔を見せなかった。
午後8時、福井県小浜市役所。「24年間の願望が実った。叫び続けた要望がやっと報いられた」。地村保志さん(47)の父保さん(75)は記者会見で、満面の笑みを浮かべた。
保志さんの妻富貴恵さん(47)の兄・浜本雄幸さん(73)も、「政府が責任を持って(子どもを)取り返すべきだと言い続けてきた。私たちの思い、願いを聞き入れてもらえてうれしい」。
雄幸さんによると、保志さんと富貴恵さんはこの日夕、浜本さんの実家で食事中に、政府方針決定をテレビニュースで知った。2人は、はしを持つ手を止め、真剣な顔つきで見入っていたという。
喜びを語っていた保さんと雄幸さんだが、夫妻に今後のことをどう話すのかと記者団から問われ、表情が硬くなった。
「政府が解決してくれるからもう少し待てと、これまでも言い聞かせてきた」と保さん。「政府の責任でやってくれるようになった。黙って指示を待ちなさいというつもりだ」と雄幸さん。
「それでも、本人たちが帰るといったら」と質問されると、雄幸さんは「どんなことがあっても帰さない」と言い切った。
地村さん夫妻は小浜市を通じて「コメントを控えさせていただきたい」と述べた。家族にはこれまで「向こうに残した子どもが気になる」と話していたという。
蓮池薫さん(45)の兄の透さん(47)は午後8時、新潟県柏崎市の自宅前で詰めかけた記者団に「政府の英断に感謝している。家族ともども大変ありがたく受け止める。とにかく安堵している。この判断に、薫が粛々と従ってくれるものと期待している」と淡々と語った。
薫さんは自宅で、夕方からテレビニュースを真剣な表情で見ていた。ニュースが終わって家族が「どう考えているのか」と尋ねた。返事はしないが、喜びも見せなかったという。
曽我ひとみさん(43)は同夜、新潟県真野町役場を通じて「突然の連絡だったからびっくりし、とまどっています」とコメントを発表した。平壌の家族へのおみやげとして、娘2人には竹細工の人形、夫には緑色のネクタイを用意していた。妹の金子富美子さん(37)は午後8時45分、町役場で記者会見。「姉は向こうに帰るという意識があったから、複雑な気持ちになっていると思う」と困ったような表情で語った。
「高く評価する」 家族会
「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(横田滋代表)は、24日、「私たちの要請の趣旨を全面的に受け入れたもので、高く評価する。今後、一刻も早く家族の帰国が実現するよう、一層の尽力を期待する。『死亡』とされた8人についても生存を確信し、さらに救出のために努力を続けたい」とのコメントを発表した。