盗聴ブント構成員「佐久間芳雄」が「理戦」に
書いた、北朝鮮への観光旅行記を抜粋したもの


【北朝鮮紀行】

貧しい現状に耐え、人々は懸命に生きていた


佐久間芳雄





 アメリカの北朝鮮に対する風あたりが強まる中、11月初旬、本社主催の北朝鮮観光ツアーが行われた。参加者は十数人。人は何をかの地で見聞したのだろうか。

 (中略)

 入国検査を列を作って待つ時間が長く感じられた。前にいるツアー主催の実践社社長の体の大きな荒さんが、数ヶ月前から地域の英会話サークルに通うようになったと言った私に、振り返って「では英語で“よろしくお願いします”ってなんて言うんだ?」と聞いた。

(中略)

 そのうちに日本語を話す北朝鮮の人が現れ、私たちは古ぼけたトヨタのマイクロバスに案内された。
 そこでガイドの金(キム)さんがマイクを取って挨拶した。「みなさんもご存知のように、いわゆる“拉致問題”を契機に、日朝関係は現在最悪の状態になっています。このようななかで、あえて実践社の皆さんが北朝鮮を訪れてくださったことに、私たちは敬意を表します」と、予想に反してソフトな感じで話始めた。

(中略)

 その日は朝から小雨が降っていたのだが、私たち日本人はみな傘をさしていた。しかしキムさんは傘をささずに、冷たい雨に打たれたまま、朝鮮の歴史を語り始めた。
 荒さんが同行していた須藤さんにキムさんに傘をさすようにうながした。しかし須藤さんは雨に濡れている金さんに余り興味を示さなかった。それで私が傘をキムさんの頭上に差すと、「私が持ちます」といってキムさんが私の傘を持った。「これは朝鮮の儒教的精神かな」と思ったが、しかし日本の観光ガイドさんで、傘もささずに雨に打たれて仕事をする人などいるだろうか。何か真摯なものを強烈に感じた。

(後略)

ブント機関誌「理戦」(「理論戦線」)75号
(2003年12月31日発行)に掲載された
 http://www.jissensha.co.jp/risen/risen75.htm 




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